歯磨きで血が出るのは「歯周病」の可能性!歯科医師がリスクを解説

「歯磨きをすると血が出る」「うがいをした時に血が混じっている」といった事が続き、悩んでいる人は多いでしょう。中には、気になりつつも「そこまで出血が多いわけではないし」と放置してしまっている人もいるのではないでしょうか。

しかし、歯磨きの際に血が出るといった現象は健康な歯茎の人では起こりません。普通に歯を磨いているだけで血が出るというのは何らかのトラブルが発生している可能性が高いのです。

そこでこの記事では、歯を磨くと血が出る原因や対処法、歯磨き時の出血についてのよくある質問についてまとめました。

歯磨きの時に血が出るのはなぜ?原因のほとんどは歯周病の初期症状

歯磨きをすると血が出る原因は、歯周病の初期症状であることがほとんどです。

歯周病の仕組み

歯周病は日本人の国民病とも言われるほど多くの人が抱える歯の病気で、主にプラークが蓄積することによって引き起こされます。

歯周病の初期症状としてはまず、歯磨き時の出血や歯茎のぶよぶよとした腫れ、赤みといった症状が見られます。

やがて悪化していくと歯の安定性がなくなってグラグラと揺れだし、最終的には歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病気なので、「少し血が出るくらい」と軽く見てはいけません。

とはいえ、歯茎に特に目立った異常が見られず、少しの出血がある軽度のものであれば適切なケアにより改善していく可能性が高いです。もしも、歯磨きの時に血が出ることに気がついたら、なるべく早めに歯科医師に相談して改善していくことが健康な歯を守る鍵となります。

歯磨き時に血が出ることに気がついたら確認!歯周病セルフチェックリスト

歯を磨くと血が出る症状に気がついたら、合わせて下記にあてはまる症状がないかチェックしてみましょう。心当たりがある症状があれば、歯周病が進行している状態かもしれません。

歯周病をセルフチェック!

  • 朝起きると口の中がネバネバと不快感がある
  • 歯によく食べ物が詰まるようになった
  • 硬いものが噛みにくくなった
  • 口臭が気になる
  • 歯茎がよく腫れる・痛みがでる
  • 歯と歯の間にすきまができてきた
  • 歯を触ると揺れる

歯周病はなるべく軽度の段階から治療を始めることが重要なので、当てはまる場合にはなるべく早めに歯科医師に相談をしましょう。

関連記事:歯茎のブヨブヨは「歯周病」のサイン。放置がNGな理由

歯周病以外に考えられる歯磨き時に血が出る原因

歯を磨くと血が出る原因のほとんどが歯周病の初期症状であると説明しましたが、別の原因の場合もあります。ここからは、歯周病以外で考えられる歯磨きの際に血が出る原因について解説していきます。

歯磨き時のブラッシングが強すぎる

歯磨きのブラッシングが強すぎるのは、歯茎を痛め出血の原因になります。強く磨いたほうが汚れが落ちやすいと勘違いしていたり、忙しいときにはついガシガシと磨いてしまいがちですが、実は歯茎を傷つけているのかもしれません。

強すぎるブラッシングを続けていると、歯茎を痛め出血するばかりか、歯の表面を傷つけ歯肉が下がる原因になってしまいます。

もし、ブラッシングの強さが原因かもしれないと思ったら、柔らかい歯ブラシに変え、優しくブラッシングするように意識してみましょう。

ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの変化は体調だけではなく口内環境にも影響を及ぼします。特に女性に顕著に見られ、妊娠中や更年期などホルモンバランスの変化が大きな時には歯肉の腫れや歯磨き時の出血が目立つ場合があります。

このような時期には、日常の口腔ケアを普段より丁寧に行えるように意識することが効果的です。例えば、普段使っている歯ブラシよりも毛先が柔らかいものを使用して優しくブラッシングしたり、歯間ブラシやフロスはより繊細に扱うようにすると良いです。

もちろん、ホルモンバランスが与える影響は個人差が大きいものです。自分の体調に普段から注意を払い、異常を感じたら早めに歯科医師に相談するなどの対処を行いましょう。

硬い・古い歯ブラシを使用している

歯ブラシは口内環境を清潔に保つために欠かせないもの。今まで選び方に気を使っていなかった人は注意が必要です。特に、硬い歯ブラシや古い歯ブラシを使用していて歯磨きの際に血が出るという人は、歯ブラシが歯茎にダメージを与えている可能性があります。

硬い歯ブラシで強いブラッシングを続けていると、歯肉を傷つける上にエナメル質を摩耗させてしまうこともあり、歯肉炎や知覚過敏を引き起こす原因になり得ます。もしも今、歯磨きの出血が気になり、毛先が硬い歯ブラシを使用している人は柔らかい歯ブラシに優しいブラッシングを意識してみましょう。

また、使い古した歯ブラシでは、毛先が広がってしまい丁寧に磨いていてもプラークが残ってしまいがちです。

古い歯ブラシを使い続けるのを避け、大体三ヶ月ほどを目安に新しい歯ブラシに交換してください。

毛先の広がった歯ブラシはNG

糖尿病・その他の全身疾患

特定の疾患を患っている場合には体のいろいろな部分に影響が現れますが、口内環境にも影響を及ぼします。特に、糖尿病は歯周病と密接な関係がある疾患です。血糖値のコントロールが難しいと歯肉炎が起こりやすく、歯磨きの際に血が出ることも多くなります。

現在特定の疾患を持ち、治療中であれば治療に専念することが第一です。あわせて、歯科医師にも相談して症状の緩和を目指しましょう。健康な人であればもちろん、生活習慣病といった病気にならないように普段から意識することが大切です。

歯磨き時に血が出る際の対処法

「今まで歯磨きをしていても血が出なかったのに、急に血が出るようになった」という時には、とても不安に感じますね。ここからは、歯磨きの際に血が出るようになった時の対処法について解説していきます。

もちろん、対処をして良くなったとしても出血は何かしらの異変を伝えているサインです。早めに歯科医師に相談をするべきということを踏まえてご覧ください。

低刺激の洗口液や歯磨き粉の使用

歯磨き時の出血や歯肉の腫れなどが気になる際に、歯磨き粉や洗口液の種類を見直してみましょう。普段使っているものより低刺激な洗口液や歯磨きを使用していくことで歯肉の腫れや出血が改善する可能性があります。

現在では洗口液や歯磨き粉のバリエーションがとても豊富にあり、歯周病の改善を目的としている製品も数多くあります。例えば、

  • フッ素含有
  • 抗炎症成分
  • 低研磨剤
  • ノンアルコールの洗口液

といった成分の製品を選ぶことをおすすめします。とはいえ、こうした製品はお薬ではなく、効果は個人差が大きいため、自分にあった製品なのかはある程度長い目で見ることが大切です。

適切な歯ブラシで正しいブラッシングをする

歯磨き時の出血が気になる時、硬い歯ブラシを使用しているのであれば柔らかい歯ブラシを使用すること、古い歯ブラシを使用し続けないことを説明しました。合わせて、正しいブラッシング方法を知り、実践することがより効果的です。

知っておきたい歯磨きの正しいブラッシング方法

□歯磨きは毎食後、三分以上かけてブラッシングをするのが理想的

□歯を4つの区分(上の右側、上の左側、下の右側、下の左側)に分け丁寧に磨く

□ブラシを歯に対して45度の角度で当て、歯と歯肉の境界に沿って優しくブラッシング

□小さな円を描くように、または前後に優しく動かす

歯の外側、内側、咬む面をすべて磨きます。内側の面は忘れがちなので注意が必要です。

中でも、特に意識してほしい点が「三分間以上の丁寧なブラッシング」です。日本人の平均的な歯磨きの時間は約45秒と言われていますが、これではプラークを十分に除去できず、歯磨き粉の有効成分も行き届きません。

しっかりと歯磨きの時間を確保して、全部の歯を丁寧に磨く習慣をつけることが大切です。

フロスや歯間ブラシを使用する

歯磨きの際の出血や歯肉の炎症は、歯間や歯周ポケットにプラークが蓄積して、歯周病が進行していることが原因です。これらの場所は通常の歯ブラシでは清掃が届きにくく、磨き残してしまいがちです。

そのため、通常の歯ブラシでのブラッシングに加えて歯間ブラシやデンタルフロスを使用することが効果的です。歯ブラシだけのブラッシングでは約60%ほどしかプラークの除去ができませんが、歯間ブラシやフロスを併用することで80~90%の除去効果があるとされています。

【デンタルフロス】
フロスを指に巻き付け、歯と歯の間に優しく入れて上下に動かす。

【歯間ブラシ】
自分にあったサイズや形状のものを選び、歯間に入れて前後に動かしてブラッシングする。

フロスや歯間ブラシは歯ブラシだけでは落としきれないプラークを除去するために欠かせません。これらのケアを歯ブラシと合わせて習慣化することで、歯磨きの出血を改善する効果が期待できます。

歯磨き時の出血に関するよくある質問

ここからは、歯磨きの時に血が出るようになった人がよくされる質問について回答していきます。

歯磨きのときに出る血は出し切った方がいいって本当?

歯磨き時に出る血は「出し切ったほうがいい」というよりは、「出し切るくらいの感覚で丁寧にブラッシングをする」と考えたほうが良いでしょう。血を出し切ったほうがいいと考え、むやみに刺激したり強く磨くというのは控えるべきです。

生活習慣やストレスは関係している?

生活習慣やストレスは歯磨きの出血と深い関係があります。例えば、不規則な食生活や誤ったブラッシングの習慣は歯周病の原因になり、歯磨き時の出血が見られるようになるでしょう。

また、睡眠不足や疲労などによりストレスが蓄積していくと免疫力が低下し、歯茎からの出血が起こりやすくなります。このような状態が続くと、歯周病のリスクが高まるばかりか、生活習慣病にもつながるため特に注意が必要です。

歯磨きの際の出血は自然に治る?

歯磨きの際の出血が自然に治るかは、原因となる症状の重さによって左右されます。軽い歯肉炎が原因の場合は、正しい口腔ケアを続けることによって改善されていく可能性が高いです。しかし、歯周病が進行している場合では一時的に良くなったとしても自然に治ることはありません。

歯磨き時の出血が続く時には、いずれ治ると軽視せずなるべく早く原因を特定して対処をしていくことが大切です。

まとめ:歯磨きの出血は歯周病の可能性!お早めに歯科検診を

今回は、「歯磨きをすると血が出る」とお悩みの人に向けて、血が出る原因や対処法について解説しました。歯磨きの際に血が出る原因としては、

  • 歯周病の進行
  • 歯磨き時のブラッシングが強すぎる
  • ホルモンバランスの変化
  • 不適切な歯ブラシの使用
  • 糖尿病などの疾患

といったことが原因として考えられますが、もっとも可能性が高いのは歯周病の進行によるものです。

歯周病は放置しているとやがて歯を失ってしまう深刻な歯の病気で、初期段階では自覚症状が少ないため、歯磨き時の出血は見逃してはいけない重要なサインです。

いずれ治まると軽視はせず、普段の口腔ケアを見直した上で定期的に歯科健診を受けることを心がけましょう。なるべく早めに適切な対処を行うことが歯周病を改善していくために大切なポイントです。